栂海新道を登る 親不知~白馬岳~蓮華温泉 テント泊縦走

山 行 日: 2012年8月10日(金)~14日(火)

参 加 者: CL T.N 食料 S.T

コースタイム:

8月10日(金)

 大津6:00=白馬11:00-12:42(JR)-親不知15:39-親不知ホテル:泊

8月11日(土)

 ホテル5:00…尻高山7:47…坂田峠8:35…シキ割水場9:50…白鳥山11:40…下駒ヶ岳13:18…黄連の水場14:25…栂海山荘17:09テント泊

8月12日(日)

 テン場6:00…犬ヶ岳6:10…北又の水場7:25…サワガニ山8:15…黒岩山9:30…長栂山13:02…朝日岳14:39…朝日小屋15:29テント泊

8月13日(月)

 テン場5:35…朝日岳6:28…燕岩9:55…雪倉岳10:05…避難小屋10:10…三国境12:20…白馬岳13:05…頂上小屋13:20テント泊

8月14日(火)

 テン場6:10…三国境7:10…小蓮華山7:43…白馬大池8:53…蓮華温泉11:10-平岩駅14:35==白馬駅16:28-入浴・食事19:00=自宅23:00

 

記   録:

 S.Tさんとの山行は、何時もヒョンな事から始るのです。それは今年の山友総会後の二次会で、お酒を呑んでいる時、仙塩尾根行きませんか?と言うと、僕、栂海新道行きたいんですと、それを聞いた途端、僕の頭の中でBINGO!それからトレーニング山行が始まったのです。何回かの山行後、夏山集中が過ぎ、とうとうその日がやってきました。

 

8月10日(金)

 早朝、S.Tさんと合流し一路白馬へ十何年ぶりかの白馬です。駅から少しの第5駐車場に車を止めタクシーで白馬駅へ。駅前の土産売り場2階の食堂で冷やし中華を食べ、JRで親不知まで、途中に平岩と言う駅があり沢山の登山者が乗って来ました。不思議に思っていると、蓮華温泉からの登山者だそうです。どこかローカル線の旅をしている様で、ルンルン気分です。この時は、その後予想もしない出来事が起こるとは知る筈もなかったのです。

 2回の乗り換えで親不知駅に、ホテルの車で断崖に建つ一軒宿へ、早速横の長い階段を下り海岸で証拠写真を撮り、日本海を望む展望風呂でのんびりし、豪華な食事と生ビールで明日からの山行が無事に終わりますようにと、乾杯です。一抹の不安を感じつつおやすみです。

8月11日(土)

 5:00いよいよ出発です。予報では3日間とも天気は悪そうですが、ホテル前の国道を渡り、栂海新道へ一歩登り出す。まるで音羽山を登っているようです。汗がどっと噴き出してくる。アップダウンの後、入道山、二本松と過ぎ、車道を渡り暫くすると、尻高山677m着。此処で単独行の人が登って来る。話してみると金沢から送って貰い、上高地まで行くらしい。お互いの無事を祈り歩き出す。坂田峠着、サルの大群が、十何頭も居るではありませんか。目を合わせない様にゆっくりと、工事現場にあるような鉄階段を登る。此処から金時坂350mの急登、鉄階段、ロープあり喘ぎあえぎ登りきるとそこに、シキ割の水場がありました。水量は細いが、冷たく美味しい水です。ペットボトルを満タン(25分かかる)にし前へ進む。アップダウンを繰り返し登りきると白鳥山1286m着、二階建ての立派な避難小屋がある。

 此処でホテルでもらった、おにぎりを一個食べる。ここから250mの急下降、急登で、下駒ヶ岳1241mを過ぎると木の根と露岩の急坂、菊石山1209mを過ぎる頃から、林の中が霧に煙ってくる。暫くすると、この山行中最も大事な、黄連の水場に到着。ザックを降ろし、下って行くと、水場が枯れています。ここで水が無いと大変です!上部へ沢を登ると、チョロチョロと流れていました。飲んでみると、とても美味しいです早速ボトルを満タンにしましたが、40分かかりました。周りは薄暗くなり、雨もぽつぽつと降りだした道を急ぎます。黄連山1320mを過ぎると、遠くに栂海山荘が見えて来ました。長い樹林帯を登りきると、青い色の山荘に到着です。中では、ツアー登山の団体がいて賑やかです。小屋前の平場にテント設営。振り返ると、幾重にも重なる山の向こうに、白鳥山が見えます。いったいどれだけのピークを越えて来たのか、全く思い出せません。南方へ目をやると、明日歩く山々の稜線が遠くまでずっと続いています。

 手作りのブルーベリージャムとクラッカーをあてに、ワインで乾杯しラーメンの夕食、8時頃から雨が降り出すが、夜半には止んだようです。静かな山頂でした。

 

8月12日(日)

 4:00に起きる。外を見ると、一面ガスの中ですが、天気は良い方に向かっているようです。6:00出発すぐに犬ヶ岳1593mここからは、やせ尾根が続きます。奥美濃の水後山みたいです。遠くを見るとアップダウンが延々と続いていますが、少しづつ高度を上げています。急坂を下ると北又の水場、栂海山荘の水場と書いてある。一面緑がいっぱいで、二張位テントが張れそうです。水量は細いですが美味しいです。歩き出すとガスが切れてくる。細い尾根ですが、上越国境稜線のようでもあります。よく見ると左右が切れ落ちています。サワガニ山1612m着。遠くに朝日岳、その右奥に剣岳が見えている素晴らしい景色だ。日差しが強くなると、汗がどっと出てくる。起伏の多い灌木帯の尾根道を進むと草原の中に文子の池、さらに進むと黒岩山1623m。

 中俣新道の分岐を過ぎ黒岩平へと下って行く。段々になった草原の中に池糖が点在し、高山植物が沢山咲いている。小さな沢で喉を潤し、タオルを濡らし汗だらけの身体を拭くと気分がすっきりして来る。木道を進み、草原やシラビソの林を抜けると、所々に雪渓が見えて来る。確実に高度を上げているようだ。アヤメ平を過ぎ30分程の急登で、広い頂上の長栂山2267m色々な花が咲いているが名前が分からない。遠くでヘリコプターの音がする。何か事故でもあったのかな、気を付けなければ。蓮華温泉の分岐を過ぎ、本日最後の急登、前方に大きな雪渓が見えて来る。その横を登り切ると、朝日岳2418m着。ガスの中、白馬岳から来た単独の登山者がいた。頂上の道標で、写真を撮ってもらい木道を下り出す。シラビソ林の急坂を下ると、登山道を横切るように雪渓からの水が流れている。ここで水分補給。冷たくて美味しい!後で分かったのですが、朝日小屋の水より美味しかったのです。急下降し木道を進むと、やっと朝日小屋に到着です。ザックを降ろし直ぐに昨日はなかったビールで乾杯です。う~ん美味い!テントを張り、ゆっくりしていると朝日岳が、すっきりと見えて来る。明日歩く、雪倉岳、白馬岳の稜線もきれいだ。夕日に染まり刻々と変わって行く山肌のアンジュレーションは素晴らしい!しかし明日の天気は悪そうです。

 後で聞いた話ですが、昼のヘリコプターは、単独の登山者が雪倉岳付近で足を滑らせ、骨折し8~9時間かけて、朝日小屋まで辿り着きヘリコプターで運ばれたと、僕たちも気を付けよう。

 

8月13日(月)

 3:30起床、天気はあいにく曇り、風が強そうです。歩き始めから急登、振り返ると、日本海が、うっすらと見えます。朝日岳を過ぎ左手に雪渓を見ながら400mの急下降、途中で熊の大きな糞発見。あわてて熊鈴を出す。

 水平道分岐を過ぎ、木道を左手に進むと小桜ヶ原。小さな沢が幾つも横切っています。白い大きな岩稜の燕岩、その付近だけ登山道が白ピンクの石におうわれたガレ場になっている。ツバメ平を過ぎると、一段と風が強くなってくる。雪倉池横の急登になる頃、大粒の雨が降り出し、合羽を着る。一段登ると、さらに風雨が強くなる。さらにガレた登山道を、喘ぎあえぎ登ると雪倉岳2610mに着く。20m以上の風雨、ガスの中、写真だけを撮り、広い山頂付近を、間違えないよう下って行く。雪倉岳避難小屋が見えて来る。風がさらに強くなる。時々体が風でヨロケながら、やっと小屋に着く。引き戸を開けると中に5~6人の登山者が居ましたが、誰も譲ってくれなかったので、仕方なく、石積の陰で小休止。体温がどんどん下がってくるので、直ぐに歩き出す。鉢ケ岳東側のトラバース道に入ると風が止む。ホッとする暇もなく、雪渓が出てくる。一つ目の雪渓は、いやらしい下り、注意しながら渡る。二つ目は、行き止まりになっているようで、向こうが見えない。仕方なく下方をぐるっと巻いて向こう側の道に合流。三つ目は、少し長いが登り気味。もう雪渓はない。少しホッとするも、風雨強く安心する暇はない。分岐2504mを過ぎ、山国境の登りにかかる。一面ガスの中、只々登るしかありません。気力も、もう限界近くクタクタで山国境2751mに着く。この風雨の中、関東から来たという山ガールが休んでいました。少し休憩の後、馬の背へと歩き出す。なんと!登山道が、一直線に石が積まれている。まるでウイニングロードのようです。十何年か前とは大きく変わっていました。最後の気力を振り絞り、やっと白馬岳2932mに到着。先ほどの山ガール達が迎えてくれました。一緒に記念写真に入ってもらう。直ぐに頂上宿舎のテント場へ。先ず小屋の喫茶室へ直行。待ちに待った生ビールで乾杯です。長かった栂海新道登山もあと少しで終わりです。

 風雨は相変わらずですが、テントを張り、ゆっくりしているとS.Tさんが明日の大雪渓下りに軽アイゼンが要るので、白馬山荘まで借りに行ってくれる事に。私はもうヘロヘロで動けませんでした。天気予報では、夕方から寒冷前線が通過するみたいです。6時頃になると、雷雲の中に入り台風並みの天気に、暴風雨に雷がそこで、光っています。テントがひしゃげポールが寝ている顔に、何度も当たりました。(後日の山行でテント使用時、ポールがひしゃげていました)今さら撤収する訳にもいかず、やり過ごすしかありませんが、一睡も出来ずに朝を迎えました。

 

8月14日(火)

 まだ風雨とも強く、食事の後素早くテント撤収後小屋に行くと、パトロールの人が、トランシーバーで、しきりに連絡をしています。聞いてみると、大雪渓が崩落と落石の危険があるので、通行しない方が良いとの事。相談の後、蓮華温泉へ下ることにする。そうと決まればコーヒータイム。温かい飲み物は身体を、落ち着かせてくれる。下山後のバスと電車の時間をチェックし歩き出す。山荘で昨日借りた軽アイゼンを返し、山頂を通過し、小蓮華山2769mまでノンストップ。ガスと風で何も見えず。小蓮華の下りで、ライチョウの親子に出会う。ホッとする、ひと時です。白馬大池辺りからやっとガスが切れてくる。ここで合羽を脱いでいると、向こうからABさんが!?本当に着ている物から、そっくりでした。蓮華温泉への道はゴロゴロした石ばかりで、濡れているため注意しながら下ります。途中、天狗の庭と言う所で、お城とかに有る様な立派な松の木が植わっている。こんな所で何故と思うが、不思議な空間だった。小一時間で蓮華温泉に到着。長かった栂海新道、海抜0mからの挑戦が終わります。ビールで乾杯し、バス停の東屋で残った棒ラーメンを食べ一服。2時間待ってやっとバスに乗り1時間の車中は、コックリさんでした。JR平岩駅に到着。また1時間待ち。ミンミンゼミが鳴き、夏の世界に帰ってきました。まさか4日前気付いた平岩駅から乗る事になるとは、不思議な気がしてきます。南小谷乗り換えで1時間待ち、白馬に着いたのが16:28でした。直ぐにタクシーで駐車場へ、風呂に入り4日間の汗と疲れを流し、駅前の食堂(最初と同じ)で、かつ丼とノンアルコールビールで乾杯!!この長かった山旅の終わりです。長い間溜めていた、この夢のような山行を叶えてくれた、S.Tさん本当にありがとう。そして山に感謝!最後に やっぱり山はええな~!

報告T.N

 

<一口感想 S.T>

 念願の栂海新道~白馬岳縦走…本当に充実した山行でした。

 とりわけ、初日の栂海山荘までの、暑さとブヨの襲撃と、幾重にも重なるピークのアップダウンの連続は、ひたすら忍耐の道のりでした。

 しかし、何より驚いたのが、T.Nさんの肉体改造でした。後ろを歩いていても全くストレスがかからない程、同じペースを心地よく刻んで…このところの山行を重ねてきたトレーニングの成果と、糖分やアミノ系飲料を、上手く補給しながら自己管理されている姿には、この山行にかけた覚悟のようなものを感じました。

 あいにく朝日岳から白馬岳までは、悪天候でパノラマ景観を楽しむことができませんでしたが、白馬のテン場の暴風雨も、大雪渓の通行自制要請による下山ルートの変更も、バスや列車の長い待ち時間も…本当にいい経験になりました。またしてもT.Nさんに感謝・感謝です。